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コスモスの花言葉 [ToHeart2]

 またか! という感じですがToHeart2 AnotherDaysについて。以下はオールクリアした方、あるいはネタバレを気にしない方だけどうぞ。なお今回は、前回までのブログを読んでおく必要は特にありません。




白詰草(以下:白):またこの形式なんですか! いい加減にしておかないと怒られますよ。
神居鈴(以下:神):今回まで! 今回までだから!
白:……で、今日は何を……
神:いや、AnotherDaysの話について、Web拍手コメが来てるから……
白:へぇ、どんな? といってもあの内容では推して知るべしだとは思いますが。
神:……うーん、なんというか「好きって言うなら、良いところを書け!」といった内容のが一件。
白:ああ、そういう……
神:まぁ、対象が一点集中の内容だったからなぁ。仕方ないっちゃ仕方ないけど、まぁせっかくなので書いておこうかと。
白:だったら、なおのことこの形式では書きにくいのでは。
神:いや、これでいい。通常のレビュー形式でも書けるし、むしろその方が詳細に書けるけど、それをやり始めると枚数が凄まじい量になる。多少表現が曖昧になっても、こっちの方が文章量を抑えられるでしょ。
白:そんなもんでしょうか。……んじゃ、ま、とりあえずキャラ毎から始めざるを得ませんが、どれから行きますか。
神:誰でも良いけど、あまり良い評価をされていないキャラにしようか。
白:となると、河野はるみを筆頭に、まーりゃん先輩、菜々子ちゃん……といったところですか。郁乃はどうなんだろう。一般的な評価は分かれるのかな。
神:まぁ、別に誰でも良いので適当に決めよう。じゃあ、いちばん衝撃が大きかったと思われる、はるみルートかな。
白:あのシナリオは、貴明の行動のヒドさと、記憶喪失に関する部分の是非が議論の中心になると思います。この点から攻める?
神:それより前に、全体としての作り方から行こう。
白:作り方?
神:白さんも思うところがあるでしょう。要所要所でのシナリオ作成者の手つきが。この点は尾を引く話なので、もう先にやっちゃおうよ。
白:ああ、それね……。えっと、明示されていませんが、たぶんはるみシナリオは三宅章介氏の手によるものだと思います。あるいはそれを模倣したか、単に似ているだけかはともかく、その癖が如実に出ていることは間違いない。最も顕著なのは――、これははるみシナリオに限りませんが、物語が動く要所において、イルファやタマ姉を筆頭にした『事象を把握したキャラによる忠告』が貴明に入る点。便宜的に事象把握キャラをワイルドカードと呼称することにしますが、全体の構築の要点がワイルドカードの動向一点に集約される構造を持っているのが特徴で、貴明の行動というのはそれらの手の内にしかない。ワイルドカードの思惑を外れないか、外れても修正可能な範囲でしか外れないので、ストーリーラインが大きく動く箇所のイベントが「説教を基本とする会話」ばかりなんですね。それ以外には、もう「貴明がなんかした」しかなくなってしまうから、ライン構成の幅が非常に狭くなっている。その上、物語の責任がワイルドカード一点に頼りきりになってしまっているので、必然的にワイルドカードに指定されたキャラの動きが画一的になる。存在がそのためのものなのでそうなるに決まっているんですが、まずいことにワイルドカード指定キャラがタマ姉だったりイルファだったり、そういった「元々血肉を持っているキャラ」のために、ただでさえ書き割りになりがちなワイルドカードキャラが、反動でさらに書き割りっぽくなってしまっている。結果として、キャラ造形は薄っぺらくなってしまうし、ストーリー全体も作り物めいた雰囲気になってしまう。……って! いきなり批判一辺倒になってしまいましたが。
神:そこは無理に褒めてもしゃーないからいいんだって。
白:うーん、とはいえ、さっきも言ってましたがこの話は全体に影を落とす話なので、これを書いてしまうと褒めづらいですよ。
神:そんなこと言っても仕方ない。そこはそれとして、今は不問にする。というかどうせ後で問題になるから今はまだいい。とりあえずストーリーラインに目を向けてみよう。
白:強引だなぁ。
神:話の筋は次のようなものでしょ。「はるみの登場→貴明の拒絶→はるみの再アタック→貴明の諦観→はるみと貴明の交流(この間は貴明のヘタレ行動とはるみの猛チャージの繰り返し)→貴明とミルファのけんか→和解→蜜月の日→記憶喪失イベント」。とまぁこんな感じ。
白:記憶喪失の後はどうしたんですか。
神:話はここからだよ。さっきは貴明寄りの視点だったけれど、ここからははるみ寄りになってみよう。というかここからはミルファなんだけども……。「記憶喪失イベント→貴明の登場→ミルファの拒絶→貴明の再アタック→ミルファの諦観→ミルファと貴明の交流(この間はミルファのツンデレ行動と貴明の猛チャージの繰り返し)→ミルファと貴明のけんか→和解→蜜月の日」。……となる。
白:言いたいことは判りますが、誰でも気づく話では。
神:構造的にはね。重要なのは、これが何を表しているかという点。ここで挙げられるのは、やはりミルファが「人ならざるもの」だということ。
白:……?
神:まず「はるみ」から。ミルファは自分が人ではないが故に、自分の存在をひた隠しにする。嫌われるかもしれない、好きになってくれないかもしれない。宿る心は偽りでないとしても、人間である貴明と同一のものでは決してない。どれだけ自分をごまかしても、心の器は人間ではない。信じてはいても、信じられない。ミルファは自分の存在を言葉を弄して正しいと思いこもうとしているけれど、結果としての行動から考えるに、実際にはまったく自分自身を信じていないはず。ここまでは良いよね。
白:はい。
神:次に貴明。彼も同じ。いまさら言うまでもなく、貴明ほど自分に自信のないキャラは珍しい。自分の言葉が、自分の気持ちが、自分に関わる何もかもが信じられない。だから他人をも信じることが出来ない。少なくともAnotherDaysにおいて、貴明は本来もっとも信ずるに足る存在であるこのみや環すら信じていない。雄二もまーりゃん先輩も、誰一人として。他人が自分に向ける好意を錯覚とし、他人が自分に投げかける忠言を誤解とし、世界を全て偽りとすることで、逆説的に自分自身の存在を確定している。そういうキャラに描かれている。要は自分だけが可愛いんだけども。
白:前作ではもう少しいい男だったんですけどね。
神:この二人が出会う時、何が起こるか。まず、はるみはとりあえず貴明へ好意を持っている。だからアタックする。貴明はそれが信じられないから逃げる。
白:で、徐々に二人は近づいて……
神:いや、近づかない。
白:え?
神:近づいてない。ただの一歩も近づいてないんだよ。
白:なんで。
神:まずはるみ。彼女は自分の正体を、体を重ねた時でさえ明かさなかった。この時になってもまだ、彼女は自分の存在を信じることが出来ていない。重ねたのは心ではなく、心の器である体だけ。
白:はるみについては、まぁ……。でも貴明は近づいてるでしょう。
神:それは疑問だな。もしはるみに心を近づけたのなら、なぜ貴明は「はるみがミルファであることを知っている」ことを告白しなかったのか?
白:それはイルファに口止めされていたから……
神:口止めは言い訳でしかない。なぜなら、貴明は「はるみ」という存在が偽りのものでしかないことを知っているんだから。体を重ねるという、男女間にとってそうとう重大な行為をしようという時、目の前にいるのが「心を開いているミルファ」ではなく、「まだ心を開かないはるみ」であることを、貴明は知っているはずなんだよ。はるみを……、ミルファのことを想うなら、そこで抱くべきではない。抱く前に、例え怒りを買ったとしても、自分が「はるみ=ミルファ」という式を知っていることを伝えるべきだ。でもそうしない。それは結局、彼女のことを完全には信じていないことの証左。
白:うーん……
神:結局、本心を交わさぬまま、牽制しあった蜜月の日は続く。そしてカタストロフィは訪れ、ようやく貴明は自分が何を失ったかに気づくわけだ。
白:そこから、はるみ……、じゃなくてミルファにアタックし始める、と。
神:そう。貴明が本当の意味で心を開いたのはここからだ。逃れ得ない現実を前に、自分を偽ることが出来なくなった――、と考えると、やや情けない気はするけれども、とにもかくにも貴明は開眼する。
白:そして、次はミルファの番ですか。
神:そう。記憶喪失前のラインと寸分違わぬ軌跡を描きながら、ミルファと貴明は近づいていく。しかし、最後のカタストロフィだけは回避され、貴明はバスの下から生還した。二人が結ばれた瞬間だった。偽りの心と偽りの姿を越えて、本来あるべき二人に戻っていく。はるみシナリオはこの基本構造をいちばん正直な形で体現したシナリオということ。
白:あれ、結局そこになるんだ。それは言葉を弄しなくても、記憶喪失イベントがある時点で、直感的にわかる範囲では? それに、それではさっきのワイルドカード問題はぬぐえていないと思います。描きたいことを描いただけでは、良作とは言えないのでは。そもそもはるみシナリオに限らず、AnotherDays全体の問題として、ワイルドカードを筆頭に「問題解決の手つきが粗い」ことが挙げられますが、この点についてはどうですか。って、なんか嫌な人みたいだ、私。
神:手つきは粗い。すんごく粗い。はるみシナリオであれば、記憶喪失後の流れが早送り過ぎて、説得力を失っていることは否めない。また、記憶喪失前にしても、「記憶喪失イベントが起こるための必然性」となるべき、「はるみと貴明の偽り」の描き方がすごく脆弱なもんだから、結局は砂上の楼閣になってしまっている。だいたい、偽りを解くだけなら、何も記憶喪失なんていう無理矢理な悲劇を持ってこなくても対処のしようはあるわけで、そういう意味では安直だね。描きたいことを描くために、描く必要のないものを描く必然性のないまま描いているせいで、何もかもが台無しになっている。キャラクターに厚みが感じられないのもそのせいで、物語に準拠するあまりに、みんながおかしな動きをしてしまう。
白:それじゃあ良いとこなしじゃないですか。描けなかったのは、描いてないことと同義ですよ?
神:致命的なんだよな、そこ。
白:諦めないでくださいよ! 日和見レビュアーの肩書きにかけて、何が何でも褒めないと。
神:なんだそれ、誰の肩書きだ。
白:アンタだよアンタ! Walkway of the Cloverの前身となったサイトでの肩書きでしょうが。
神:あー、そうだったそうだった。
白:このアホは……
神:と言っても、そう無理に褒めるってわけでもない。良いところはちゃんとあるんだから。……さて、基本構造と、全体の欠点は抽出した。ちなみにこれは動かしようがない。これはどうしようもないの。
白:ちょっ……
神:まぁまぁ。欠点は欠点としてしょうがないのよ。それを反転させても、レビュー自体に無理が出るだけだって。結局は「それ以上の何か」を持ってくるしかない。
白:それ以上の何か?
神:と、ここでミルファはいったん止めて、次はシルファに行くぜ。
白:え? 何でシルファ?
神:連携するんだよ、AnotherDaysのシナリオは。シルファルートのラインは覚えてる?
白:えーっと……、「シルファ登場→牽制の日々→イルファの登場→再び牽制の日々、ただし貴明だけはシルファの正体を知っている→再度イルファ登場、シルファが正式に貴明のメイドに→何気ない日々と、近づいていく心→苦悩する貴明→シルファを傷つけてしまった日→和解→初夜→再び苦悩する貴明→不安なシルファ→再び和解→エンド」。要素が多いですね。
神:裏返してごらん。シルファ視点に。
白:え? えーっと……、「貴明登場→牽制の日々→裏でイルファの登場→再び牽制の日々、裏では貴明がシルファの正体を知っている状態→再度イルファ登場、正式に貴明のメイドになる→何気ない日々と、近づいていく心→傷ついた日→和解→初夜→認めてもらえない不安→再び和解→エンド」
神:もうちょっと想像力たくましくしてほしいんだけども……
白:どういうこと?
神:つまりね……、「貴明登場→牽制の日々→裏でイルファの登場→再び牽制の日々、ただし貴明だけはシルファの正体を知っている→再度イルファ登場、正式に貴明のメイドになる」までは良いとして……、「何気ない日々と、近づいていく心→苦悩するシルファ→貴明との壁を感じた日→和解→初夜→素っ気なくなった貴明→認められない不安→再び和解→エンド」というような感じで。
白:「苦悩するシルファ」?
神:心情吐露の場面と前後の状況から間違いない。彼女もまた「人ならざるもの」である悩みを持っている。表出した形が違うだけで、ミルファと同じなんだな。自分を信じること、自分を好きになってあげることがどうしても出来ない。貴明とて同じ。シルファが自分に寄せる思いの本質を信じることが出来ていない。体を重ねた時点で、シルファの方は素直に心を開いたことがミルファとは違うけれど、貴明については結局いま一歩踏み込めていなかった。若干の差異はあれど、近似した要素を持つシナリオであることは間違いない。
白:うーん……
神:足かせとなる悩みが表出化した理由については、「ミルファ・貴明」が根源的な存在についてだったのに対し、「シルファ・貴明」の場合は「根源的な存在を修飾する後付けの建前」が問題になった。建前である"契約"を根源的なものと勘違いするから、お互いを信じることが出来ない。逆に言えば、シナリオの違いの全てはそこに集約される。貴明よりも、シルファの方が先に心を開いたのは、契約が何一つ心の枷にならないことを彼女が知っているからだ。
白:貴明は知らないから、あるいは信じることに躊躇してしまうから、なかなか踏み出せない……。
神:それらの基本構造を見れば、2つのシナリオは「いったん近づいたように見えた心が実は重なってはおらず、ある事件をきっかけにようやく結ばれる」という点で同じになる。
白:まぁ確かに
神:そしてね、これはシルファに限らない。よっち、ちゃる、菜々子の3人を含めた5人が、この構造の支配下に入る。
白:ああ、そういえば、確かに……。それぞれが抱えた問題に差異はありますが、骨組みだけを見れば近似していますね。結局、自分や他人をどれだけ信じられるかというのが、それぞれの中心になってますし。
神:そう。そして、春夏さんを除けば、たったひとりだけこの構造から外れているのがまーりゃん先輩になる。彼女の存在こそが、AnotherDaysがその身で体現しようとした形の、すべての中心になるんだよ。
白:まーりゃん先輩ですか。
神:彼女だけが貴明に恋していない。貴明の気持ちもまた恋ではない。それはシナリオ中に明言されるし、それについて疑う必要もない。それは理解の前提条件として差し支えない。では、まーりゃん先輩シナリオが目指した地平とは何だろうか?
白:……テキストから読み解ける範囲では、「"好き"の本質」だと思います。これもシナリオとしては強引な展開が目に付くのですが、"愛しているいない"が人を想う心の最重要項目ではない、というメッセージが横溢しています。では、何が重要なのか。それを考える時、まーりゃん先輩が常に語る「俺がおもしろいことだ!」が浮上してくる。これは前作姫百合姉妹シナリオでもさんざん語られた命題ですが、「人を好きになることを難しく考える必要なんてないんだ。ただ、お互いを大切に想う心があればいい」ということに繋がっていく。
神:そう。まさにそれがAnotherDaysの本質でもある。はるみ、シルファ、よっち、ちゃる、菜々子が最後に手に入れたのは何だったか。まさに、「大切なのは、あなたがそばにいること」ってことだよね。みんな、最後に守ったのは、最後に手に入れたのは、至極シンプルな感情なんだよ。はるみで言えば「過去も今も、偽りも真実も関係ない。いま、自分があなたを好きだと言うことが全て」、シルファで言えば「好きな心を縛る契約なんかない。どれだけ周囲が変わっても、私はいつだってあなたのことが好き」、ちゃるなら「たとえどんなに障害が多くても、あなたのそばにいたい心は何者にも負けない」こと、よっちの場合なら「自分を偽り続けたとしても、そして、友達を傷つけるかもしれないのだとしても、好きな心は止められない」、菜々子シナリオなら「建前なんか関係ない。あなたのことが好きだから」――。すべてが、「いちばん大切なのは、あなたと一緒にいること」、すなわち「"好き"の本質」を示している。各シナリオの構造は、先に挙げた基本ラインを守りながら、このテーマを描くことだけを念頭に構築されている。その意味で、情動を廃したシステマティックな基礎の上に、この作品は成り立っている……。
白:となると、まーりゃん先輩のシナリオだけが、他と構造を異にするのは……
神:ブレイクスルーだね。他キャラのシナリオでは、各個人の足かせになった各種のしがらみを、まーりゃん先輩は笑い飛ばす。「人外? 世間体? なんだそりゃ。そんな細かいこと気にしてんじゃねえ。好きなら好きでいいじゃんか。何をためらう必要があるんだよ」って。他全てのシナリオで培ったものを飲み込み、無に帰しながら、これまでのToHeartシリーズが描いてきたものをひっくり返す。まーりゃん先輩が"人外の存在"なのは、それを強調するために他ならない。そこには平穏な日常もなければ、人を好きになった時に付随する苦悩もない。小さな平和はことごとく破壊され、代わりに浮上してきたのは、目もくらむような"陽"。
白:ハレの日、ですか。……これまでのToHeartシリーズとは確かに逆ですね。ToHeartシリーズはハレの日たる"非日常"ではなく、平凡な"日常"こそを主眼に構築されてきた作品群ですが、先の神居さんの解釈でいえば、AnotherDaysはまるで逆の狙いを持つ。つまり、「日常から非日常への脱却」。
神:そして、脱却した先の非日常こそが、真の日常に転化する仕掛け。ミルファにダーリンと呼ばれて愛される日々、家で自分の帰りを待つ可愛いメイドロボ・シルファの存在、結ばれた相手はテキ屋の親分の娘・ミチル、毎日のように繰り返されるチエとの情事、手を出したら犯罪必至の恋人・菜々子、そして、まーりゃん先輩と久寿川ささらに振り回される南国の島……。
白:郁乃であれば「悲しみを越えて訪れた新しい日々」、このみ&タマ姉でいえば「最高の美少女たちとの愛欲」。そして……最後に残った春夏さんであれば、「リセットされても周りは女の子だらけ」。
神:貴明の……あるいは郁乃の日常において考えられなかった全てが、各シナリオのエンディングで描かれる。そうやって俯瞰すれば、作中の要素全てが整然とその方向を目指していることに気づく。AnotherDaysが目指した形がそこにある。全体として、非常に強固な意志に基づいて作成された作品なんだな。外れるところ無く、作品はそれを目指している。こういったキャラが乱立する作品において、全体がこれだけ整然と一つの方向性に並んでいるのは賞賛に値する。
白:そこが、「それ以上の何か」ですか。
神:そう。ただ、唯一にして最大の欠点が、「そのためにキャラクターが犠牲になった」こと。それはさっき挙げた構築上の問題が大きな原因になるんだけど。
白:そのせいで――、プレイヤーから見ていちばん目にすることが多く、またこの種のゲームとして最重要視される「キャラクター」が魅力的にならないせいで、全てが中途半端になってしまった……。はるみシナリオでいえば、キャラクターにもっと目を向けていれば、記憶喪失イベントをもっと魅力的に描くか、あるいはそれ以外の方向性を模索できたはず。全体がそんなことの繰り返し……。致命的というにはあまりにも致命的な欠点です。
神:それさえなければ……、という思いは確かにある。しかし、それでもなお、描こうとした方向性が間違っていたわけではないし、描けなかったわけでは決してない。
白:「Another Time, Another Place...」でも書いたとおり、"達成"はしている。……そう、達成していないわけではないんですよね……。
神:ほとんど暴力的なまでの力技にはなったけれど、目指したテーマだけは達成した。その点は素直に評価したい。本当に……、逆境だらけの中、よくぞ描いたものだと思う。この世界観を見せてくれたことが、AnotherDaysを高く評価する最大の理由。
白:ただし、欠点の存在箇所があまりにもマズすぎ、かつ、デカすぎる。もう、もったいないとしか。
神:難しかっただろうね。何しろ、ToHeart2ではなく、そしてToHeart"3"でもなく、AnotherDaysなんだから。まず、それを作る意味づけが必要だ。何のためにAnotherDaysは制作されるのか。そこから始まって先のテーマが出現してきた時、苦難の道のりは運命づけられてしまった。テーマ、モチーフ、構造、作品の持つ存在価値についてまで、何もかもがToHeartシリーズから脱却したもの――"Another"な"Days"だから。
白:春に咲く花――、桜の花。「あなたへ贈る微笑み」という花言葉を持つ桜が緑の葉に変わり、枯れ葉としてかつての存在から"脱却"する頃、咲き誇るは桜ではない、"もう一つの季節を描く桜"であるコスモス。宿る花言葉は「乙女の愛情」――。なぜコスモスなのか、その真意がそこにある。……という要素はおもしろい。そういったギミックは本当におもしろいんですよねぇ……。
神:まだしも、別キャラで、違う舞台で、ぜんぜん関係ない存在として描ければ良かったのだろうけどね。でも……
白:でも……
神:でも……そう、でも、嫌いにはなれない。
白:描いた形は愛しい。そこに至るまでに傷跡は無数につけられるとしても、最後に咲いたコスモスは可憐に薫っている。馥郁たる香りではないかもしれないけれど、そこには確かに残り香が宿っている。
神:それは情熱の残り香であり、それを目指した全ての存在が見た夢の残り香でもある。いびつな形ではあっても……、そこに咲く花の色に、創りし者の情熱を見ることが出来る限り、嫌いになる理由はない。
白:コスモスの花が散り、長い冬が開けてもういちど微笑みが咲く頃、描いた夢はどんな形に花咲くのか――。AnotherDaysを読む時、いつも、舞い散る桜を思い出すのはきっと……
神:この物語が、いつか訪れる未来を決して悲観しないことを、痛いほどに実感できるから――




 ――幸せの香りは風に乗って、遙かな夢へと飛翔する。迷うことなく、あの空の彼方を目指した翼は、約束された地に舞い降りて小さな花を咲かせることだろう。
 それは、日々を虚しく消費する悲しい毎日の中で、それでも夢見た"もう一つの日々"。AnotherDaysに想いを馳せた全ての人の心に宿る乙女の愛情は、きっと、薄紅色の幸せを花の香りに乗せながら――、いつまでも、この世界に歌い続けることだろう。




2008年3月10日 ――神居鈴&白詰草
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